【スロヴェニア】 なつやすみ 風アザミ
2007年08月28日
ウィーン西駅から高速列車EC(ユーロシティ)に乗って6時間。
最初はオーストリア人で満員だった1部屋6人席も最後は私1人。窓の外には青々とした森が広がる。
着いたのは、スロヴェニアの首都Ljubljanaリュブリャーナ。
正直に言うと、スロヴェニアはユーゴスラビアから最初に独立した国ということ以外はほとんど知らない。一体どんなとこやろ。
午後2時到着、ここが本当に首都かと驚く。
全てが手の平に乗ってしまいそうな、こじんまりとした街である。
駅の南1キロ四方に全てがあり、一番太い道路(といっても2車線×2)以外は車はほとんど通らず、のんびり歩く人たちと小道が続いている。
駅南すぐに宿をとり、さらに南へ、街の中心の広場に向かうことにする。
まるで秘密の迷路に迷い込んでしまったかのような、レンガ続きの細い道。
人は多くない。信号を待っていたら、横断歩道の向こう側で1人か2人待っているくらいの割合。
真っ青な空の下、丘の上にそびえるリュブリャンスキー城の頭上で旗がはためいているのが見える。
細いリュブリャニカ川を渡ると、野菜と果物の市場。のんびりおしゃべりするおばちゃんたち、ラジオからゆっくり音が流れている。
色彩があふれる。ニンジンやブロッコリーに加えて珍しいのは、柔らかそうな白いパプリカと白いトウガラシ、顔の大きさほどあるずんぐり黒々としたしたナス、大きなユリ根のような茶色い根菜。紫は玉ねぎとピート。
青果マーケットの奥には服の出店も並び、その横のロシア正教徒のカラフルなろうそくの出店を過ぎると、ふいにぱぁっと華やかな匂いに囲まれる。
色とりどりの花たち。何種類もあるユリ、背の高いグラジオラス、バラにカーネーションにガーベラにカラー。
そして川沿いに伸びる白い石柱のアーケードの下でハンドメイドのグッズが並ぶ。
木や皿に細かい絵を描いたおばちゃん、木細工の可愛らしいおもちゃを売っているおじいちゃん、ビンに花の絵を描いて中にアンズや胡桃を漬け込んだ自家製ハチミツを入れているおじちゃん、カラフルでセンスのいいガラス細工でアクセサリーやグラスを売っている若いお兄ちゃんお姉ちゃん。
それが終わるとシルバーアクセサリーの店が並ぶ。木や貝を使った不思議なデザインが多くて、聞いてみたらそれも全て売り子が自分で作ったという。
その脇、小さな橋が3つ続くところにPresenov Trgという街の中心の広場がある。Annuneciation教会とオープンテラスのカフェに囲まれた、25メートルプールほどの大きさしかない小さな広場。車はバスと小さな汽車型トラムしか通らない。面白いことに、広場の真ん中はいつも雨。人工で降らせる雨の下で子どもたちがはしゃいでいる。
広場から先の川沿いには柳が枝垂れ、カフェの白帆のパラソルが続き、のんびり川辺を楽しむ人たちがいる。
広場からたった300メートルくらいのところは、もう郊外。寂れたレンガ作りの家が各々庭に広い畑を持ち、市場で売られていた野菜や花はここで育てられたのね、と納得する。
照りつける夏の太陽と真っ青な空の下、ある家の中から小さくラジオの音が聞こえ、ある塀の前では背高く育ったひまわりたちが頭を垂れ、ある庭にはホースで水を蒔いている上半身裸のおじちゃんがいて、あぁこれは夏休みの原風景だわ、と思う。歩きながら井上陽水の『少年時代』が口をついて出る。麦わら帽子が欲しいな~。
歩いていると驚くほど教会が多くて、地図でざっと数えても30くらいはある。
1つ1つの教会がそれぞれ凝ったつくりになっているのが面白くて、教会を見つける度に中に入る。
広場に臨み、内部はびっくりするほど荘厳で緻密なAnnuneciation教会。中でミサをやっていた。
蔦が絡まるSt.Jacob教会。隣接する中庭から見ると、壁面にナスカの地上絵のような模様が描いてある。
後部がガラス張りなので、入口から見るとちょうどステンドグラスの模様が映ってハッとさせられるSt.Jamez教会。恐らく練習中なのだろう、下手くそなパイプオルガンの音が鳴り響く。
図書館を見つける。黒い石をふんだんに使い、創意を凝らした堂々としたつくり。中でたくさんの学生が勉強していた。
人々はとてもチャーミング。目が合うだけで口角が上がる。道を譲ったりドアを押さえてあげたときにこちらが微笑んでも笑みを返さない人はどこの国にもいたが、ここには滅多にいない。
St.James教会で話したこのスロヴェニア人のおばちゃんに至っては、「良い時間をね」と言ってゆっくり投げキスまでしてくれた。
緑に囲まれた川沿いを広場へと戻る。犬の散歩をする少年、ベビーカーを押すママ、絵を描いているお姉さん、木陰でギターを弾いて楽しそうにふざけあっている若者たちに出会う。
細い小道に入ると、弱く吹いてきた風が肌に気持ちいい。道の真ん中にテーブルを出すカフェが続き、夕食をとろうと席に着く。
陽が落ちてから広場に戻ると人が増えていて、パラソルの下カフェバーでゆっくり酒を飲みながら川辺を楽しむ様子が広がる。淡くライトアップされた教会の下で、懐かしい洋楽メロディラインを奏でるライブが始まり、カフェの各テーブルにろうそくが灯る。
ドリンクに黄色い花を添えて持ってきてくれた金髪ショートヘアのウエイトレスさんは、「くつろいでいってね」と言ってにっこり笑顔を残していった。
何という穏やかな日だっただろう、今日は。
この小さな国では、たった数時間で首都の全てを見ることができてしまう。人口200万人、その8割以上をスロヴェニアンが占める、ほとんど単一民族国家に近いバルカン半島の1国。
ゆったりと流れる夏休みの時間に癒された。
<今日のグルメ>
スロヴェニアのビール“UNION”。あっさりして飲みやすい味わい。名前から、この国がバルカン半島・旧ユーゴスラビアで生きてきた歴史を感じさせる。
オリーブオイルがかけてあるカッテージチーズのサラダは、ピーマンや紫玉ねぎが生のままふんだんに盛り込まれているのに苦いどころかほんのり甘い。あの畑で陽射しをいっぱいに浴びて作られたのかな、と想像。



