北京にて出迎えてくれたのは、加藤嘉一ことヨシ。
我が盟友ジョッキーこと朝倉氏の紹介である。ありがたや。
いやはや、こいつぁ凄い。
北京大学国際関係学部の4年生。
日本人留学生会の会長を務め、成績優秀。
完璧な北京語の発音。中国人すら彼を中国人だと思っている、(実は日本人なんだ、というと現地人がびっくりしたような顔をしている。)まさにMr.ローカル。
そして、誰とでもすぐ友達になる明朗な性格、最後までやり切る根性、陸上長距離走者の体力、日本と中国の将来について真剣に考える熱い志で、あらゆる方面で奔走。
日中米のメディア、政府、ビジネス界において引っ張りだこの人物。
海外の大学へ留学して、その国トップの高校で教師も勤め、自分がレギュラーをするテレビ番組を持っている人が果たして他にいるだろうか。
今、中国で最も有名な日本人の一人。
とまぁ、超人のように書いてしまったが、私が彼を一番尊敬する点は常に努力し続けているところ。
昨日はヨシと深夜までビアガーデンで飲み明かす。
今日は北京一素敵な場所だという、胡同(ことう)をヨシに案内してもらう。
「発展」という方向へ音を立てて変容していく北京の各主要メインストリートを1歩入ると、昔ながらの北京っ子が住む下町が広がる。
この混沌さがいかにも中国らしい。狭い路地に椅子を出し、裸に近い格好同然でのんびりと午後を過ごすおじいちゃん・おばあちゃん。1歩外が嘘のようにゆったりとした時間が流れる。
ええのぅ。
夜は、ヨシの北京大学の親友・李志善(チソン)と彼のお父様・李太龍(李憲一)さん、人民日報の記者リャオさんとその後輩で、客家料理を頂く。
甘辛く蒸したスズキと、岩塩の釜に入れて焼いた串刺しの海老が美味やわぁ。
チソンは在日朝鮮人。高校まで日本にいて日中韓英の4ヶ国語を操り、6カ国協議などでは通訳ブースで活躍する…やっぱり世界にはとんでもない学生がいるもんだ。
日本人とのハーフで、祖国朝鮮の問題に将来を捧げたいと模索中。
サッカーの腕前もプロ級!!のナイスガイである。
チソンはちょうど明日が卒業式なので、日本からお父様が訪中。
太龍おじさまは、朝鮮半島統一に文字通り「命を懸けている」とおっしゃる。
統一を何と捉えているのか、と質問をぶつけてみた。ちなみに、昨日の韓国で珍姫さんには、「若者は故国統一に反対。なぜなら、韓国側にとってメリットがない上、コストがかかりすぎる。」と聞いていた。
「アジアの安定のためには、朝鮮半島が統一されることが一番だと自分は考えている。だから祖国統一に頑張っているんだよ」
「北朝鮮を訪問してみると、確かに辛い生活を強いられている国民たちも多い。しかしその一方で、みなアジアの平和のために頑張るんだ、という使命感に燃えているんだよ。これは、北朝鮮の教育では徹底して行われている。」
日本の報道は、金正日の個人的な健康状態だとか女遊びだとかにばかり注目しているが、本質を見ようとしているのか。
北朝鮮の外交手腕はやはり認めざるを得ないほど上手く、一方で日本政府が拉致問題や核問題を外交の手札としてうまく使えていない現状もある(時間稼ぎをしているならまた話は別だが。)
日本の後手後手の外交が変わるにはどうしたらいいか。内圧として、世論及び私の同級生たちが省庁内で頑張っていることは知っている。
しかし、日本外交の性格上、変化の影響力があるのは外圧であり、北朝鮮問題が最も効果が高いと考えていた私は、太龍おじさまの意見に賛成するところも多かった。
ただし、北朝鮮の実態は正直よくわからない。太龍おじさまのおっしゃる教育も実際にどこまで行われているのかわからない。
北朝鮮に行けないかなー。
一方、人民日報・国際部のリャオさん。清華大学卒のエリート。
人民日報は政府のプロパガンダじゃないの?と聞いたら、「対ドゥイ(そうだ)」と明快な答えが返ってきた。
それでもいいと思うのか、むしろなぜそれがまかり通るのか、という質問には、
「政治家以外にも、ビジネスマンや外国人に至るまで人民日報は読まれているが、みな加工された情報だとわかった上で、行間を読んでいる。われわれの役割は、物事に対する共産党の意向を随時伝えること、そして行間で真実を伝えること」
という。
社会主義のプロパガンダが現代で担う役割、なんて面白いメディア構造。
ただ、彼がこの仕事を選んだのは「戸籍」が問題だという。
中国では、労働力の流動化を防ぐため、農村部と都市部の間に戸籍というストッパーがある。
戸籍問題のため、就きたい職業に就けない現状。
リャオさんは、もっと収入のある仕事に就きたかったが、田舎出身の彼は北京戸籍が欲しかったため、
それが手に入る人民日報の記者という職を選んだ。
(超優秀な一握りの人間に限り、戸籍の壁を越えられる仕組みになっているのだ。科挙の流れか)
共産党の作った戸籍制度で仕事の選択肢を狭められ、それでも共産党の手足となって働くことをどう思うの?と多少いじわるな質問をしてみたら、
「制度云々ではなく、その中で自分が何を感じどう行動していくのか、自分をどう最大限に生かすのか、という方が自分には大事。貴方も、仕事を始めたら自分がやりたい領域と仕事が求める領域が食い違ってくることもあると思う。そういうことを感じながらも、精一杯頑張ってほしい。」
という答えが返ってきた。賢い人だな。
チソンに、中国で学んだ最も大きいことは何?と聞いたら、
「スケール」
という答えが返ってきた。
中国では、何をするにも幅がでかい。土地、人口のみならず、不屈の精神、バランス、物事を進めるときの緻密さと適当さ、スピードの緩急、その影響で自分の考え方の幅が広がったという。
でも、限界まで行くと、必ず「共産党」という壁にぶち当たる、と言う。
そうだ。中国には共産党というイデオロギーが本当に強い。
日本で国際関係学を学ぶ、というと、もちろん優秀な学生が集まってはいるが、ややもすると定義が曖昧で“広く浅く”に陥ってしまいがちだな、というのが個人的な勝手な見解だったのだが、中国で国際関係学を学ぶと、大前提として「中国共産党」があるのだ。
これが定義となって、その上に学問が形成されていく。そのような形でチソンもヨシも、4年間学問をやってきたのだ。
学問に留まらず、国内で起こることは何でもそう、共産党が大前提。
その枠の中でなら、何をやっても許される社会。
アメリカだったら、大前提は「国益」となるのかもしれない。
日本は、日本人は、ここまで明確な定義を持っているだろうか。
ふぅ、初日からかなり濃いぜ、北京。