【ドイツ】 己の欲せざる所人に施すことなかれ
2007年08月15日 19:12
早起きしてベルリンの街を散歩。
冷戦時代、ベルリンは東側が旧ソ連支配下、西側がイギリス、フランス、アメリカの支配下で、東側に住む者にとって西側への脱出が切なる願いだった。
しかし面白いのは、今街として発展しているのは東側だ。
ステファンの言っていたように、断然東側の方が面白い。
堂々とそびえるシナゴーグ(ユダヤ教礼拝堂)や現代的なテレビ塔、たくさんの種類の博物館がひしめくミュージアムアイランド周辺を歩く。
午前10時を過ぎたら、最初は“ベルリンの壁”めぐり。まず博物館へ。
当時の新聞や遺品が時系列で展示され、生々しい“壁”の歴史が迫ってくる。
東側から西側へ、人間が車のトランクの下敷きの下やスーツケースの中に身体を小さく折り畳んで脱出している痛々しい様子の横に、“Escape assistance”と呼ばれるアイディアリズムとビジネスが生まれたと記述されている。
1962年、Peter Fechterという負傷した18歳の青年が、東側の壁の上で“Help me!”と50分間叫び続けたのちに死んだとき、西側の東に対する憎悪が膨れ上がった、という事件が詳細に描かれている。
その他、海外を含めたアーティストたちが“壁”に関して寄せた全てのアートを館内で展示している。その数約1500。冷戦という出来事は政治的事件の枠を超えている。
圧倒的だったのは、最後に全ての宗教の共存が唱えられていたこと。
“己の欲せざる所を人に施すことなかれ”
と日本語も含めた各国語で書かれた表示の下に、
「世界の宗教―平和と道徳」として、仏教・ユダヤ教・キリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教・儒教の主な解説とそれぞれの平和に対する考え方が書いてある。
西・東という“壁”の話に留まらず、世界的平和にまで考えを持っていくその意識に敬服した。
館外へ出てベルリンの壁の残りを見に行く。左右に壁が二重になっており、その間に掘られた溝の中からソ連の兵士が常に監視をしていたのだ。これが43キロにも渡って張り巡らされ、幾度と無く東側から西側への脱出が試みられて大勢の人が死に、最後は歓喜の声と共に壊されたことを想像する。そして世界平和とは何なのかも想像する。
午後はユダヤ教徒の歴史巡り。
まずユダヤ人ホロコーストのモニュメントに行って、…驚く。
街中に突如広がる無機質なコンクリート群。
同じ底面積を持つ直方体が等間隔に並べられ、それは内側に行くほど高くなり、中央部は人間の背丈をすっぽり隠してしまうほどになる。
これが…メモリアル…。
そしてユダヤ人博物館へ。
ジグザグと不規則に曲がりながら東西に横たわる真っ黒な建物。この超近代的なデザインの建物から出てくる人たちの顔がみな一様に神妙である。
写真可なのでデジカメを持って入る。
中に入って驚く。
悲惨な歴史を、言葉や遺品で示すだけではなくなんと体験で感じさせるのだ。
現代アートを基本にして、精密に計算されたつくりになっている。
理性的に被害を語ることなく、むしろ感性に訴えかけてくる。こんなに効果的な方法があるのか…!
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例えば、「ホロコースト・タワー」。
高さ25メートルのコンクリート壁に囲まれた狭い空間に来訪者を閉じ込める。
上部にわずかに入る自然光が逆に空間の異常さを際立たせて、言いようの無い絶望感に襲われる。
「脱出の庭」。
庭と言っても、高さ4,5メートルはあるコンクリートブロックが立ち並び、他の人がどこにいるのか全く見えない。
そして圧倒的なのが、この展示。「空っぽの記憶」。
全て人の顔の形をした鉄が敷き詰められ、そこを歩くと金属音が鳴り響き、もう言いようの無い…。
「Missing」と書かれた黒い壁。イヤホンをして前に立ち音波を捉えようとするが、砂嵐音ばかりでなかなか音が聞こえない。ちょっとずつ移動するが、音を捉えたと思ってもすぐ消える。不安に襲われる。
途中で、「あなたの願い事は何ですか」というざくろの木があり、みな実に書き込んでぶら下げる。
その後は、紀元前からのユダヤ民族の歴史が続く。幸運な時代もあれば、迫害された時代も続く。
博物館を設計したDaniel Libeskindは、テーマを“Between the lines”とした上で、「ここでの展示の本質は、あなたが感じること全て」と言っている。
ユダヤ人が負の遺産を捉えることに対しての何か突出した力のようなものを感じた。
現在ドイツ国内ではほとんど国旗が掲げられていない、とその後話したドイツ人に言われた。戦時中に自分たちが犯した罪を決して忘れてはいない。そして過去の罪もその後の受難も、負の遺産として正面からしっかり見据え、世界平和に思いを馳せる形で後世にしっかり伝えられている。
奇しくも今日は日本の終戦記念日。
日本はドイツほどに戦争や民族迫害、慰安婦問題に正面から取り組んでいるか。
心底考えさせられた。
<今日のグルメ>
街のあちこちで見掛けるプレッツェル!
外はパリッとして、中はもちもち。外側に大きめの粒塩がまぶしてある。
もうね、病み付き。散歩途中、テレビ塔すぐ近くの赤い市庁舎前での朝ご飯でも。
いくつも買ううち、店によってはちょっと温めてくれ、それが一層美味い。
それから、schwarzwalderというブラックチェリーのケーキ。これもどこの店にもあり、四角く切って出してくれる。見た目より甘すぎず、酸味も効いてる。
ステファンが、「街中にカフェはたくさんあるが、道端にテラス席を出している店は観光客用。地元のカフェに行きたかったら建物の間をちょっと入った中庭風になっているところ(“島”というらしい)の店に行くべきだ」と言っていた。確かに雰囲気が違う。
3日間で毎晩ビールを1リットル(1杯500mlなのでおかわりしたらすぐ1リットル)飲み、ソーセージはカレーソースから子牛から血詰めからあらゆる種類を食べ、お腹はもう大満足。



