
アンタを待ってたよ!太陽!!
ゴキゲンな空模様を目にしたらバルト海が見たくなって、宿をチェックアウトして街の南に向かう。
昨日より人が多い。
でも昨日よりパッと見のオシャレ度は低い。観光客が多いのかな~。
日本人も見掛ける。
有名なMarimekko。

あれ?人が多いっちゅーか多過ぎない??
なんだなんだ?
ローリストォ?
…!
ローリング・ストーンズ!!!!
えっここから出てくるの!?
ワーオ!!
現金な私は、にわかローリング・ストーンズファンになって人混みと共にホテルの前で待つことにした。
でもなかなか出てこない。
まだかなぁ。
…なんかめんどくなってきた。
筋金入りに現金な私は、「あたしはローリング・ストーンズを見たいんじゃない。ローリング・ストーンズファンのフィンランド人を見たいんだ」というめちゃくちゃな理由をつけ、人混みの後ろのオープンテラスのカフェで座って待つことにした。
こりゃミーハーたちのミーハーですな。
待つこと1時間。
来た!!!!
きゃー見ちゃったホンモノ!!!(笑)
ま、一瞬だったけどね。
今日はツイてるかも!
でもフィンランド人たちの熱狂ぶりはやっぱり控えめだった。
普通に沸き起こった拍手と、2~3人の口笛のみ。
うーんお国柄ですかねぇ。
でも、晴れて雰囲気が変わった街と、これだけ出待ちが集まるってことは結構ミーハーな人が多いんだなという印象で、まだフィンランドわかってないんじゃーん?と思い始める。
もう1泊するか。
でもあの坂を上って宿に戻るのは億劫(おっくう)だわ。
直近で宿を取ろう。
そう思って1件目。
満室。残念。
2件目。
ドミトリーもシングルも空いてないが、ダブルなら空いてると言う。
70ユーロ≒11200円という値段にしばし迷う。
でももう6時だしな。この調子だと他ももう空いてないかもしれない。
ダブルで決心をする。
部屋に入って、ホテルマン・赤川一平としての使命を思い出す。
んーやっぱりお洒落!!
ただ、お洒落さと値段の話は別。1晩70ユーロはどう考えても高過ぎる。
シェア仲間を探すことにする。

ヘルシンキ駅に向かい、着いたときに使ったツーリストインフォメーションの前で張り込む。
女の子1人もしくは3人連れがホテル探して来たら、ドア入る前に先取りじゃ。
できればフィンランド人だとおもろいな。
フィンランドらしいひょうきん(失礼!)な顔した子来ないかな。
しばらく待ち伏せするも、1人30歳くらいの女バックパッカーが地図を取りに来ただけで、しかも今夜は友達の家に泊まると言う。
あー空振りか…。
すごすごと宿に帰る。
フロントで明日の朝ご飯は?と聞くと、プラス7ユーロ≒1120円必要という。
「それって伝統的なフィンランド料理を食べられたりする?」
「いや、コーヒーとパンとサラダだね。でもホテルの隣にビュッフェ形式で朝食が選べるところがあるよ」
「そこはフィンランド料理もあるのね?てか、そもそもフィンランド料理ってどんなのか教えてもらってもいい?」
「おーそれは難しい質問だね。実は先日友達と議論したばっかりなんだけど、そのときはハンター料理じゃないかって話になったんだ。ウサギ使った料理だね。
あとはこの旅行雑誌を見てごらん。このライ麦のパンはやっぱり有名だね。これは隣のビュッフェにもあるはずだ。
それから蟹。ここに載ってるレストランの蟹はお薦めだけど、高級な店だから小さい1匹が5ユーロ(900円)もするんだ。もしお金があるなら行ってみたらどうかな。」
あれ。なんかこのお兄さん、今まで会ったフィンランド人とちょっと違う…。
「ありがとう。もうひとつ聞いてもいい?あなただったらヘルシンキの中でどこを最もお薦めする?」
「おーそれも難しい質問だね(笑)。よしわかった、この地図を見てごらん。世界遺産のスーメンリンナ要塞はもう行った?あー確かに雨だったもんね。ここはやっぱり行っておくべきだよ。船はここから出てる。 でもよく見比べた方がいい、船会社によって値段が違うからね。
あとはどんなジャンルのものが好きかによるな。面白いものが見たいならここの市場。建物が見たいならこの2つの教会は有名だけど、僕なら別の教会をお薦めするね。ちょっと遠いけど、なんと地下にあるんだ」
あ。このお兄さんなら何でも答えてくれそうだわ。
そこで、一番聞きたかったことを聞いてみた。
「よくわかったわ、ありがとう! 明日行ってみるね!
ついでにもうひとつ教えてほしいことがあるの。
フィンランドにはサンタクロースがいるって本当?」
「それはね、“true”なんだ。サンタクロースは存在する。
フィンランド人は子どものときみんなサンタクロース村のサンタに手紙を書くんだよ。僕も書いたし、返事ももらった。これはファンタジーじゃないんだ。
いろんな人がサンタに成り済ましているけど、それは構わない。だってフィンランドに経済効果があるからね。ただ、アメリカ人なんかがサンタはスウェーデンにいると思っているのは許せないな。」
ほう。なるほどねー!
「あなたは親切ね。実は私寂しかったの。フィンランドに来てから友達ができなくて。普通のフィンランド人ってシャイ過ぎない?」
「そうだね。フィンランド人は外の人間が怖いんだよ。独自の文化を持ってきたから、外国人と触れ合うのを恐れるんだ。友達をつくるのは難しいだろうね。もし6月に来てたら、学生がガイドのボランティアをやってるからもう少しいろいろ話ができたかもしれないね。」
「でもあなたはフィンランド人よね?どうして?」
「僕はエストニアに留学してたから慣れてるんだろうね。」
「どうして留学してたの?」
「エストニアの文化と言語を学びたかったからさ。でも僕みたいなのは珍しい。フィンランド人はたいてい国内の大学に行く。
ところでキミ日本人だよね?日本の学校はランクが決まってるんだろ?フィンランドには国立の大学しかなくて、しかもレベルは全て一緒なんだ」
なにー!!
「NOKIAについて教えてほしい。どうしてノキアはあそこまで成功できたの?」
「僕こそ教えてほしい。どうして日本のメーカーはソニーもトヨタもあんなに成功できたんだ?」
もうここからお互い質問が止まらない。
なんと4時間もフロントで話し続けた!!気付いたら日付が変わってた。
むっちゃくちゃ面白かった。
彼の名はMarko Haajanenマルコ・ハージャネン。
エストニアの大学を卒業して現地のフィンランド大使館で働いた後、政府の教育機関と外交機関に勤めていたという。今はとある事情でHotelli Finnのフロントマンをしている。だが、ローンを考えると転職したいと言っていた。
こんな人と出会えるなんて、やっぱり今日はツイてる。
もちろん、途中で他のお客さんも来たから多少中断もしたのだが、
「日本って家がすごく狭いんだろ?」
「そうよ。…実はひとつお願いがあるの。狭い部屋に慣れてる日本人の私にはあのダブルルームは広過ぎる。しかも私はそんなにお金を持っていない。もしホテルが満室になった後に女の子が泊まりたいと言ってきたら、シェアしたいから教えてくれないかな」
「わかった、知らせるよ」
という会話をしていたので、予約をしていたはずのおじさんの部屋がないということになったとき私が部屋を譲り、代わりにスタッフルームのソファベッドに25ユーロ≒4000円で泊まれることになった。
やっぱり今日はツイてる!!
こんな部屋でした。トイレ付、シャワー共用。
私たちの会話はお互いの国への興味から始まってその比較へと議論になっていったのだが、整理して記してみようと思う。この頃には私はメモを取っていた。
Mがマルコ、Wがワカコねん。
○経済
M 「日本の経済力は世界でも驚異だ。第二次世界大戦で同じ敗戦国だったのに日本とフィンランドにこれだけ差が出たのは、やっぱりその後ソ連側についたかアメリカ側についたかだよね。」
W 「日本は戦後すぐにアメリカによって国のシステムが変えられた。でも戦後1960年代を中心に高度経済成長があって、日本人自身もすごく頑張ったんだよ。このときメーカーも技術発展に全力を尽くして、 その後80年代バブルのときに一気に世界に打って出た。
1964年の東京オリンピックも加速要因だけど、フィンランドは戦後すぐヘルシンキオリンピックがあったよね。」
M 「敗戦の引き換えに日本は国内に米軍を受け入れたよね。でもフィンランドはずっとソ連のために経済発展し、ソ連に金を供給していたんだ。
でもいいこともあった。冷戦終盤、ゴルバチョフがレーガンにホットラインをかけたろ?あのときゴルバチョフが使っていた電話を見てアメリカでは大騒ぎになったそうだ。なぜコードがついてないんだ!ってね。つまり、旧ソ連の軍事技術をフィンランドが受け継いでできたのがノキアってわけなんだ。」
○国民性
W 「マルコはフィンランド人にしてはとてもフレンドリーだし、私はクレイジーな日本人だから典型的な国民ではないけれど、シャイという面では両国共通するよね。同じように独自の文化、独自の言語を持っているからかもしれない。
でも、私の感覚ではまだフィンランド人の方がオープンな気がする。だって話しかけたらみんな英語が話せたよ?」
M 「フィンランドは95%がフィンランド系、5%がスウェーデン系の人口構成になってる。普段はフィンランド語、そして学校でスウェーデン語も習うからこの二つが公用語。
あとは、テレビなんだ。フィンランドで流れてる番組はほとんどがアメリカなんかから輸入しているから、みんなテレビを見て英語を覚える。」
W 「もうひとつ共通する点として、自殺大国ってことがあると思う。日本人はストレスによって自殺する人が多い。」
M 「フィンランド人で一番多いのは経済的な理由。ローンが払えなくなって自殺したりね。」
W 「日本は精神的な理由が多くて、フィンランドは経済的な理由かぁ。」
○政治
W 「日本ではこの前なんと大臣が自殺したのよ。」
M 「知ってるよ。それで選挙は大変だったんだろ?首相が辞めるかもしれないとか。」
W 「!! 詳しいね!! どうして!?」
M 「だって日本の国会議員にはツルネンがいるじゃないか。
この新聞見てごらん、アベの写真がでかでか載って、1ページ全部日本の選挙のことだろ。この下の方にコメント載ってるのが2回目当選のツルネン。」
W 「彼が日本とフィンランドの“橋”ってわけね。」
○文化交流
W 「ツルネン以外にフィンランド出身で日本で有名なのは…ごめん、あまり知らないや。多分、母は音楽家なんかをよく知ってると思うけど。」
M 「日本人はF1ドライバーのミカサロと結婚したノリコ、スキージャンプの原田、映画監督の黒澤明が有名だね。
今ヨーロッパでマンガやゲームだけじゃなく、日本の音楽が大流行なのは知ってる?この前のヘルシンキ音楽祭でも大人気だった。みんな日本のバンドをコピーしたがってる。
しかもフィンランドには日本の音楽をやって日本で売り出そうとしてるバンドがあるんだ。日本ではミリオンセラーとかが大変なことかもしれないけど、フィンランドは人口500万しかいないから2~3万部売れただけで大変な騒ぎだよ。だから日本で少しでも売れればそれで十分元が取れるのさ。」
○教育
M 「フィンランドは小学校から大学まで国立しかなくて、しかも学費は全部タダ。大学なら最大8年間無料で通える。学校ごとにランクはなし。
大学は各都市に1つずつあって、ちょっと学部の差はあるけれど大抵地元の大学に行く。僕みたいに留学する人は珍しいし、それも外国の言語や文化を学びたいという人だけだ。
それ以外だと、どんなに大金持ちの家庭でも子どもをハーバードやオックスフォードにさえも行かせない。みんな国内の大学に行く。なぜなら、フィンランド人はフィンランドの大学がナンバーワンだと思っているからさ。」
W 「教育の機会が平等なのね。日本は私立もあるし家庭の経済力で教育格差も広がるし、だいぶ違う。
日本では子どものイジメが問題になってる。原因は2つあると思う。
一つは、コミュニケーション不足によるストレス。親が忙しくて子どもと十分向き合えなかったり、塾通いが多かったり、テレビゲームで1人でも遊べたりする。
もう一つは、教育の建前と本音の食い違い。表向き、みな平等だという教育をしていて、個人よりも団体でどう行動するかというような学校イベントも多い。でも、本当は常にランク付けされていて、成績順位だけじゃなくて学校自体にもランクがあるし、会社に入るときは学歴が見られて収入に大きく影響する。この食い違いを子どもたちもどこかで気付いてる」
M 「信じられない。ケンカはあるけど、子ども同士で他人を生死に関わるほどまで追い詰めるなんてその社会はどうなってるんだ。」
○福祉
M 「福祉財政を支える消費税22%、表示は税込み表示。所得税は僕はたった18%で済んでるけど、もし医者だったら月収10000ユーロ≒160万円として60%。あと僕は郊外に住んでいるから住民税は抑えてるけど、ヘルシンキに住んだらめちゃくちゃ高いよ。」
W 「消費税高っ!累進課税は一緒だけど、フィンランドの福祉は本当に平等に配分されるから、それで格差をなくしているわけね。」
M 「僕がもし指を切って病院に行ったら、そのタクシー代も全てタダになる。でも保険の制度には問題もあるんだ」(この話は私の英語力では理解できず。残念)
W 「日本も高齢化が進んで問題になっている。このままじゃ支えきれない。」
M 「中国やインドの人口を見るとこのままでいいのか不安になる。でも女性の晩婚化が進んでいて、母は25歳で僕を産んだとき、その時代じゃ遅すぎるくらいだった。でも、今は平均30歳で産んで1~2人。子どもを持たない、という選択肢が生まれてきた。日本の女性はどうして産まなくなったの?」
W 「日本でも同じで女性が働き始めた。経済成長の始まる60年代から家族の形態は稼ぎ役、専業主婦、子ども平均二人に固定化されてたけど、社会が成熟して女性の選択肢は増え始めた。」
○労働
M 「さらに特徴的なのは、労働時間に制限があること。1週間に最大37.5時間しか働いてはいけないんだ。それ以上働いても残業代は出ない。」
W 「日本では土日も出勤するビジネスマンがたくさんいるよ。」
M 「日本人は働き過ぎなんだ。もっと生活を楽しめばいいんだよ。そうすればストレスも減って、自殺率も減るんじゃない?」
○環境
M 「スーパーで水買ってたの? フィンランドの水道水は世界で最高に綺麗な水なのに。
世界ミネラルウォーター大会って知ってる?去年、ボルヴィックなどのメーカーを抑えてフィンランドの生活用水が1位になったんだよ。湖から引いている水で、水道パイプも40年に1度の割合で変えてるんだ。」
W 「だからどこのトイレにもコップが置いてあるんだね。私がフィンランドに住んでたら絶対にミネラルウォーターの会社を起業する。あ、でも世界では売れないか、ユーロ高いから市場はヨーロッパかな。」
M 「ユーロが高いのはフィンランドにとってとても良いことだ。僕らはかなりの恩恵を受けている。」
うわー超長い。読むの大変だ。
私の力不足・認識不足で議論が詰め切れてないところも多々あるけれど、大体こんなところだった。
私なりに見えてきたのは、外側から見た日本の姿。
フィンランド人より日本人の方が間違いなくシャイだ。外国人への免疫が圧倒的に少ない。英語を話せる人口の少なさがそれを物語る。外国人が日本に来てとまどう気持ちが私は今回初めて理解できた。
しかし、誇れるものはたくさんある。マンガ、ゲームといった文化は言うに及ばず、音楽まで注目されているとは知らなかった。元々ツルネンも日本に惚れ込んで国籍を変えた。
手放しでフィンランドの政策が良いとは決して思わない。福祉を充実させて労働時間も制限したところで、彼らは経済的理由で自殺していくのだ。教育で競争がない代わりに、新しい技術も生まれにくい。ノキアだって冷戦時代のソ連の遺産だ。
日本の税政、教育、労働は経済力とトレードオフなんだ。その事実をはっきり認識する必要がある。
<今日のグルメ>

高級ホテルPalace Kampローリング・ストーンズの出待ちをしているときに大衆の後ろで悠々と食べたケーキセット。
ベリー系がムースやソースになって何種類か組み合わせられ、絶妙なハーモニー。
もちろん彼らが出てきたとき座っていた椅子の上に立って見てましたが、何か?(笑)