【オランダ】 リベラルと自己責任

  • 2007年08月16日(木)
  • 19:17

ショート・トリップになっちゃうけど、多少無理しても寄ってみたかった国、オランダ。
この国でカフェと言ったらドラッグを吸う所。
リベラルさで有名なこの国は、大麻の解禁、安楽死や同性結婚の認可も先頭集団で突っ走る。


一方、日本との馴染みも深い。17世紀オランダ東インド会社で隆盛し、当時鎖国状態であった日本の江戸幕府と出島での貿易を許された国として小学校でも習う。


さーてさて、一体どんな国やねん?


朝、ベルリン中央駅から高速列車IC(インター・シティ)に乗り込む。
肌の色が濃いアジア人が多く乗っている。はて。オランダ領植民地だったインドネシア系やトルコ系の人かいな〜と思う。
夕方アムステルダム到着。



いやー!このゴロ合わせセンス、最高やね!!



宿の場所がわからず苦労していたら、ABN AMRO銀行から勤務を終えて出て来たミシェルさんに声を掛けられる。
親切に案内してもらい、少々立ち話。見た目60歳半ばほど。話を聞くとポストバンクから転職して5年目、窓口業務の統括をしているらしい。


「日本人?日本にはお世話になっているんだ。PHILIPSに勤める弟が赴任しているから。ねぇきみ、このあと予定はあるかい?私は今から友達と飲みに行くのだが、1時間半ほどで終わるから、もしよかったらその後アムステルダムを案内してあげようか」


本当ですか?わーい!
午後6時半、再び落ち合って一緒に歩き始める。




アムステルダムは水路の街。北東で海を背にする駅を中心として半円状に水路と街が広がる。
「美しい街だろう?私はずっとここで育ってきてここが大好きなんだよ。ミュージアムがたくさんあって、ここから見るだけでもあそこにリエイクスミュージアム、こっちにゴッホ美術館、ここにダイヤモンド博物館があるのがわかるだろう?」





「Vondelパーク。アムステルダムには大きな公園が5つある。綺麗に整備されているだろう。ここは安全な場所だ。ジョギングやウォーキングをやっている人もいるが、一番多いのはドラッグをやっている人たちだ。」
ほんまや!ギターかき鳴らして踊ったり、怪しい足取りで笑っているひとたち…みんなふらふらしてるけど、これみんなラリってるわけですか!!
さすが合法ドラッグ大国…。



お茶をしながらいろいろ質問。


ドラッグについてどう思う?
「ドラッグを悪いと思わない。あなたがしたいなら、あなたが決めること。したいならすればいい。タバコやアルコールも一緒。」


なぜオランダはドラッグ解禁してるの?
「収入源確保のため。例えば、週末はイギリス、フランス、ドイツ、イタリアからたくさんの人が来てドラッグを楽しみ、オランダにお金を落として週明けに帰っていく。それでいい。」
そんな土地柄もあって、ミシェルは英仏独伊蘭の5カ国語が理解できるらしい。オランダは週末旅行の距離的にもベストだという。


会話を通じてわかったのは、ドラッグに関わらず安楽死・同性愛などオランダのリベラルは全て自己責任に基づいているということ。
道徳うんぬんももちろんあるだろうが、そういう政策をとることがヨーロッパ他国から人を招き、経済効果をもたらしているわけかい。戦略的ね。そしてこれが治安悪化を招かないよう苦心しているのだろう。


ミシェルとの会話はかなり面白かった。このような時間を作ってくれたミシェルにとても感謝した。
ただ。悲しかったのは、そのあと。


きみはもっとオランダについて知りたいと思わないかい?そうだ、きみに本格的なオランダ料理を作ってあげよう。明日うちに遊びに来なさい。私は1人暮らしだから何も遠慮することはない。私の仕事が終わったらうちで一緒にディナーをしよう。そして一緒にドラッグもしよう。あなたは今までドラッグの経験がないから初回は刺激が強すぎる。カフェや公園でやると荷物を盗られて危ないからね、家の中で安全にやるのが一番だ。宿から荷物をうちに運んで泊まっていきなさい。私は弟のうちが空いているからそっちに泊まればいいわけだから。そして次の日の朝になったら一緒にアムステルダムを散歩して、その後郊外にドライブに行こう。明後日はちょうど土曜日で仕事も休みだからね、オランダの綺麗なところを全て見せてあげる。何?ロンドンで友達が待っているって?じゃあちょっと遅れると今すぐ電話を掛けなさい。テレホンカードも買ってあげる。航空会社に知り合いがいるから、ロンドン行きのチケットもとってあげよう。そうだきみに服も買ってあげようね。アムステルダムの夜は寒いだろう?そんな薄着じゃ風邪を引くよ。お金は心配いらない、だって私は仕事で稼いでいるからね。私のほんの気持ちだよ。さて明日は何時待ち合わせがいいかな。私の仕事が終わった後、5時はどうだろう。何を作ってあげようか。やっぱりチーズは欠かせない。…。


勝手に話が進んでいく。私にほとんど口を挟ませず、ずっと同じことを繰り返し言い続ける。
途中で、あぁこの人は寂しい人なんだな、と思う。初老の男性だが、さりげなく聞くと、奥さんも子どももおらず趣味も特にないらしい。


しかしここで同情の余地はない。誘いに乗るかどうかの判断だって全て自己責任である。


見た目も仕事も本当にきちんとした方だ。そして恐らく騙したりするつもりも全くなく、私のことを気に入ってくれている。しかし。


ああダメだな、と思ったのは、「一緒に二人で」という言葉である。


日本でもナイスミドルのおじさま方とお付き合いさせていただく機会はあったのだけど、きちんとした方ほど決して二人きりで会おうとはなさらない。特に初回はなおさら。必ず、先方が他に誰かお連れになる、もしくは誰か友達を連れてきなさいと言われる。二人でお会いするとしてもランチどき。そこらへんが、ジェントルマンの愛情だなぁ、と思う。


お茶と素敵な会話を楽しんで、せっかくいいひとときを共有できたのに…。悲しくなりつつその後2時間も彼と押し問答し、やっとの思いで宿へと帰った。


<今日のグルメ>
街角で見かけるまるでおもちゃのようなチーズたち。もちろんハイネケンビールもよく目にする。

【オランダ】 鎖国日本の足跡

  • 2007年08月17日(金)
  • 19:20

昨日、現代のオランダの様子は垣間見ることができた。
でも、まだオランダの中にかつての鎖国日本の姿を見出せてなーい。


当時、和蘭(オランダ)から持ち込まれる品々は日本人の目を奪い、和蘭千里眼と言ったらメガネ、和蘭墨はインク、和蘭石竹はカーネーション、和蘭三葉はセロリ、和蘭芹はパセリ、和蘭雉隠しはアスパラガス、和蘭焼は白身魚に卵を使った料理…さすが私、だんだん食べ物ばっかりになってきたわい(笑)。
情報に高値がつき、オランダの知識を持っているものは金持ちになれた時代。


日本はオランダから西洋文明の影響を受けただけ?
江戸幕府はオランダに何も影響を与え返していないの?


朝一番で向かった先はヴァン・ゴッホ美術館。
浮世絵にインスピレーションを受けたゴッホについて知りたかった。


ノルウェーで触れたムンクと真逆で、19世紀に生きたヴィンセント・ヴァン・ゴッホは本当に恵まれなかった画家。
貧困を極め、独学で絵を学び、当時世間にはほとんど認められず、恋に破れ、病に苦しみ、最後には援助をしてくれていた弟テオの足手まといになっているのではと悩んだ挙句自殺…。


オランダでミレーを目標として素朴な農民たちを題材とした後、パリに移り住んで技法の革新を試みる。モデルを雇うお金がなかったため自画像で技法の実験を繰り返し、その数なんと27点。
そしてこのとき浮世絵に出会う。江戸日本から持ち出されていた歌川広重らの浮世絵を集めて模写に没頭。
彼が油彩で一生懸命描いたであろう「振り返り美人図」や「吉原八景」を観て、その後作風の画面構成・色彩・輪郭がくっきりと変化したことに魅入る。



この後、南フランスの田舎アルルに移り住む。絵から、貧しさと絶望感と、絵を描ける喜びが伝わってくる。


そして1枚の絵に釘付けになる。あまり有名ではない絵のため、他の人が素通りして同時代に描いた「ひまわり」へと移動していく中、私はその「Field with flowers near Arles」がすごく気になった。


手前にはアヤメの花。遠くに木々といかにもヨーロッパ風の赤い屋根と白い壁を持つ家々が並び、その間には一面の麦畑のようなものが広がる。
そしてテオに宛てた手紙の文面が添えられていた。
「牧草地いっぱいのキンポウゲ、水路にはアヤメの紫の花と緑の葉。遠くに映える街。グレーの柳が2〜3本、そして青い空。テオ、知っているかい?これこそが日本の風景だよ」


ああ。
彼は見たことのない日本の風景をフランスの田舎から懸命に想像して描いたのだ。
浮世絵から始まって、どんなに日本のことを想っていたのだろう。
田んぼも藁葺き屋根も日本のそれとかけ離れた様に描かれたその絵は、でもどこか日本人の私に懐かしさを覚えさせる雰囲気を持っていた。


ゴッホの真摯な姿勢に打たれ、また日本とオランダの文化が確かに相互交流をしていたことを思い、私はおそらくその絵の前に一番長くいた。


その後彼の作品は、独特の色遣いと点・線の見事な融合を見せて終わる。
弟テオを想って自殺。わずか半年後にテオも亡くなる。本当に仲の良かった兄弟の墓は今も並んで葬られている。



<今日のグルメ機



ゴッホ美術館の開館を待つ間、水路を越えながら駅まで散歩。
大航海時代、1633年に港に建てられた見張り塔に起源を持つ由緒正しいVictoria Hotelでちょっとリッチにオランダ式朝食をとることにした。
Hollandse “Polderbol”
通称「農民ロール」というらしい。メインは肉ではなく何枚もの古チーズ!オランダ名物の丸型をそのまま輪切りにされた巨大なチーズはとても素朴な味がする。
Etwtensoep
伝統的なエンドウ豆のスープで、さつまいもやじゃがいも、ソーセージをとろっとろになるまで煮込んである。つけ合わせとして黒麦パンにカラシとスモークベーコンを挟んだものがついて、味に飽きさせない。

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旅人

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1983年生まれ。東大法学部卒。
社会人としてスタートを切る前に、夢だった世界一周へ。

尊敬:緒方貞子さん
趣味:バスケットボール、ベリーダンス、サーフィン、バイク

著書

メディア出演履歴

【雑誌】
『Zai』(ダイヤモンド社)「ミニ株バトルコーナー」連載(06年7月号〜07年7月号)
『社労士V』連載(日本法令)(07年10月号〜)
『メモ ノート200%活用ブック』(日本能率協会)
『クロワッサン』(対談 高田万由子さん)
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