【ボスニア・ヘルツェゴヴィナ】 内戦の痕

  • 2007年08月31日(金)
  • 22:28

ドゥブロヴニクからは列車がないのでまたユーロバスに乗る。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都Sarajevoサライェヴォに着いたのは夜10時過ぎ。
真っ暗な中、宿をどうするかな〜と思ってバスを降りると、待ったましたとばかりに地元の人が話しかけてくる。
彼らは長距離バスや電車の到着時間に待ち受けている、恒例の部屋貸しの人々。
1泊いくらでうちに泊まりに来ないか、という声を半ば無視していたら、ジャパニーズウェルカム!と熱心に言ってくる40歳ほどの女性がいた。

背は165センチほど。ひどく痩せていて、あごまでの金髪の髪のてっぺんをピンクの髪ゴムで留め、ピンクのTシャツの上からフリースを着ている。かなり挙動不審で、めちゃくちゃに単語を並べるくせに無理矢理意味を通じさせてしまう不思議な英語を話す。
変わってる。でもこのひと、目が綺麗。
信用してみるか、という気になる。1泊の値段も20KM(コンバーティブル・マルク)≒1400円でぼったくりではない。

一緒にトラムに乗って彼女の家に向かう。名前はJasnaヤスナ。しきりに、寒くないか、荷物は重くないか、かばんの口をしっかり押さえろ、お金には気をつけろ、と繰り返す。どうやら心から心配しているみたい。大丈夫、他に乗客は2〜3人しかいないし、貴重品もしっかり持ってるよ。

サラィエヴォの中心、Bascarsija地区の中央を通るMula Baseskije通りから歩いて3分、古びたアパートの1階にヤスナの家はあった。
2部屋と洗面所。広い方の部屋は10畳ほどで、隅にぽつんとガスコンロ。壁際におおきなタンスとソファ、真ん中に大きなダブルベッド。自分はソファで寝るから、そのベッドを使えという。
ヤスナがタンスの傍からウチワを取り出した。そこには、「ありがとうヤスナ。健太郎…」などと日本語で3人ほどの名前が書かれている。よく見ると、ベッド脇にも折鶴やら日本の10円玉やら、ここに泊まっていった日本人からの贈り物がたくさん、大事に並べられている。
「ジャパニーズ、グッド。フェリフェリーグッド。グッドピープル。マイフレンド。」
とヤスナは言う。

どうやらヤスナはここに1人暮らしをしていて、小額ながら部屋貸しをすることで生計を立てているようだ。日本人の旅行者はみな礼儀正しいし優しいから大好きだという。

申し訳ないけど今日はもう遅くて疲れたから晩ごはんを作る気がない、外へ食べに行かないか、というようなことをヤスナが言う。いやいや、作ってもらうなんてとんでもない。行こう行こう。
連れ立って外に出る。ライトアップされた街の中を、流行の格好に身を包んだ沢山の若者が歩いて行く。下北沢みたいな雰囲気。
心配性のヤスナはつないだ私の手を離そうとしない。二人手をつないで、なんだか楽しい気分になって人混みをかきわけて歩く。

通りを渡ったらヤスナが立ち止まった。足元の道路を指差して言う。
「戦争。銃。」
と言う。それを見て私はびっくりした。
道路に銃弾によるものらしき破壊穴が残っている。よく見れば、小ぎれいでおしゃれな店に紛れて、無数の銃痕が空いた壁がある。
これは90年代の内戦の痕!?ここの繁華街ですらまだ残っているの!?

平然としてヤスナは歩いて行く。

突然、道は、背の低い昔ながらの木造りの店が並ぶ通りになる。
すべて、旧市街を利用した土産物屋。車は入らないFerhadijaという通り。これがライトアップされた光の中、えんえんと続いていく。
そこを少し行ったレストランにヤスナは入って行き、そこで遅い晩ごはんを食べることに。

注文を待つ間にあれこれ聞いてみたら、どうやらヤスナはクロアチア系住民で、1992年に両親とドイツに移住し、1997年に一人で戻ってきたらしい。つまり、ユーゴスラビア解体後、クロアチア系カトリック教徒+ボスニア系イスラム教徒 VSセルビア系ギリシア正教徒の内戦が始まったときに国外脱出し、内戦後に戻ってきたということだ。セルビア人についてどう思う、と聞いたら、昔は悪い、今は(自分たちと)同じ、という返事。

私の「Hvalaフヴァアラ=ありがとう」が上手なのに驚くヤスナ。ドブロヴゥニクで練習したからね〜。すると私のノートを取り上げて1〜30までの数字を不器用に一生懸命書き出した。書き終わると、今からクロアチア語で1度読んでみるから全部覚えろテストするから、という。きゃースパルタやねヤスナ!!

部屋に帰り、ベッドが大きいから一緒に寝ようと言うのを私は疲れているからダメだと断固拒否し、ヤスナは服を脱いで狭いソファに身体を押し込むようにして眠った。

<今日のグルメ>
ヤスナが連れて行ってくれたFerhadijaにあるレストランで、ヤスナがお勧めするcevapciciケバチチ。スポンジ状のナンの中にケバブ、つまり肉が一口サイズにして焼いてあり、玉ねぎと一緒に入っている。サライェヴォでは最初にこれを食べないと、とヤスナは胸を張って薦めてくれた。味は塩味で薄め。ドリンクはプレーン味の飲むヨーグルト。

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旅人

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1983年生まれ。東大法学部卒。
社会人としてスタートを切る前に、夢だった世界一周へ。

尊敬:緒方貞子さん
趣味:バスケットボール、ベリーダンス、サーフィン、バイク

著書

メディア出演履歴

【雑誌】
『Zai』(ダイヤモンド社)「ミニ株バトルコーナー」連載(06年7月号〜07年7月号)
『社労士V』連載(日本法令)(07年10月号〜)
『メモ ノート200%活用ブック』(日本能率協会)
『クロワッサン』(対談 高田万由子さん)
『週刊現代』『女性セブン』
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『月刊人事マネジメント』
『週刊ダイヤモンド 別冊特集』
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