【バーレーン】 おっとり島国気質の優男

  • 2007年10月04日(木)
  • 00:00

アラビア半島での移動はもっぱらエア・アラビアを使っている。安い燃料代を反映したリーズナブルなフライトだが、必ずアラブ首長国連邦のシャールジャ空港でトランスファーをしなければならない。

「へーイジャパニーズガール、今度はどこへ行くの?」

小さな空港ゆえ、頻繁に出入りする私はすでにスタッフに顔を覚えられている。

アラブというよりアジアにいるような錯覚を起こさせる空港内は、実は出稼ぎ労働者たちのビザ発行を兼ねている。大勢のアジア人たちが、床に座ってビザ延長の順番を待っている。

私はいつものように断食中独特の空腹を抱え恨めしくカフェを素通りし、食べ物が目に入らない席でバックパッカーのバイブルガイドブック『ロンリープラネット』を取り出して読み耽る。

すると、大慌てで係員がやって来て叫んだ。

「おい、ジャパニーズガール!次はマナーマに行くんじゃないのか!もう離陸しちゃうぞ、フライト繰り上げの放送を聞いていなかったのか!?」

ええっ!大慌てで荷物をまとめ、係員について猛ダッシュ。シュクラン(ありがとう)!助かった!と叫びながらゲートを抜けてなんとか乗り込む。

ほっ。

安心の溜息をついたのも束の間、なかなか飛び立たないことに違和感を覚えてイライラしながら待っていると、飛行機は何事もなかったかのように定刻通り離陸した。

…やられた!

係員たちにからかわれたんだ私!
フライトが遅れるならともかく繰り上げるなんてあるわけない。腹を抱えて大笑いしているであろうアラブの係員たちが目に浮かぶ。してやられた!思わず自分も苦笑い。 

***

バーレーンの首都Manamahマナーマは抜けるような真っ青な空を背景に濃い紅色の花が咲き乱れ、ゆったりとした雰囲気が漂う。観光目当てのサウジアラビア人が全長24kmの橋をかっ飛ばしてやってくる島国である。


アラビア半島最大の展示規模という国立博物館を訪れる。
マネキンが並ぶ歴史展示を見ると、砂漠遊牧民族ベドウィンは太古から女性は黒装束、男性は白装束を着ていたようで、海洋民族でもあったようだ。高質の真珠がよく獲れたという。
女性の婚礼衣装が地方によって異なり、ここぞとばかりは色使いも黄緑・赤・黄などと艶やかで、真珠をふんだんに使ったアクセサリーがよく映えている。

館内をぶらぶらしていると、制服を着てサングラスをした背の高い警備員に話しかけられた。

「ラマダン中だから早上がりするんだけど、よかったらドライブに行かない?」

おっとりした話し方と、制服のかっこ良さとサングラスの奥のつぶらな瞳に参った私は、ほいっと誘いに乗ることにした。


警備員マサァムの運転する車はぐんぐん南に下っていく。オアシスにある都市部を抜けると、広がる砂漠はキャラメル色にふんだんに白を混ぜたような淡いベージュ、その奥に見える海の色もソフトな水色で気分が寛いでいく。

マサァムが運転しながら耳につけた無線型コードレスイヤホンで携帯電話を通じて友達と話す様子は、東京でデートしたコンクリートミキサー車のあんちゃんとそっくりで可愛らしい。

それにしても、最初に比べて異様な陽気さ。女の子とデートするのが久し振りで浮かれてるのかしらと思っているうち、原因に気がついた。吸っている煙草から怪しい匂いがする。

「もしかして、ハッシシ(大麻樹脂)吸ってる?」

「Yes!君もやらない?」

と言って、ほぐしてハッシシを巻くのに使うためタバコを取り出した。うーん、興味はあるけれど、私帰国してから働くのがアメリカの会社で薬物チェックがあるという噂があるから丁重にお断りしておくわ。
せっかくの優男なのに、ハッシシ常習とは残念無念。

「じゃあ、酒でも飲みに行こうか。」

どうやらアラビア半島の観光地・バーレーンは、イスラム教で禁じられている酒にもドラッグにも寛容みたい。サウジアラビア人がバカンスで来る訳ね。

 
***


夕陽を見ながらロマンチックなドライブを続け、腹ごしらえをし、到着したのはマサァムの叔父、テリー伊藤似のハミードの家。

…なりきり中国趣味!?
所狭しと物が詰め込まれた部屋には「福」を逆さまにした中国の縁起物の真っ赤なワッペンがあらゆるところに張られ、天井からはパンダのぬいぐるみや連なって、おや、よく見ると「雷門」と書いた提灯もあるぞ。

巨大な甲羅、キジに鹿の剥製、何の動物かわからない骨格模型、鳥籠。ぷーんと生臭いのは、積み上げられた水槽にピラニアやら熱帯魚やらを飼っているそう。

缶ビールを持ってきてくれたテリー伊藤、もといハミードは、自分がこれまで旅した数々の国の話をしてくれた。旅好き仲間よ、歓迎!優しいマサァムは、私が意気投合できるであろう叔父のところにわざわざ連れて来てくれたのだ。

翌朝、ラマダン中のアルコールが影響したのか、記憶力が低下し、フライトの時間を勘違いして乗り遅れる。こんな風だと、またシャールジャ空港の係員たちにからかわれちゃうわ。


<グルメレポート>


アラブのご当地マクドナルド、「マックアラビア(McArabia)」。パンではなく薄いピタで具を包む。イスラム教は豚肉を口にしないため、肉はコフタ(ビーフ)とグリルチキンの2種類。一緒に輪切りトマトとざく切りレタスを包み、ゴマソースで味付けしてある。アラブ料理特有の辛さはなく、日本人も好みそうな味。

トーマス・フリードマンが『レクサスとオリーブの木』で展開した黄金のM型アーチ理論は、マクドナルドが繁盛するほど経済的に豊かな国同士は戦争をしないというものだったけれど、それよりも親米か否かの判断材料ではないかと思う。
イスラム教国ではこれまでアラブ首長国連邦、クウェート、バーレーンでマクドナルドを見かけたが、イランには1店もなかった。

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旅人

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1983年生まれ。東大法学部卒。
社会人としてスタートを切る前に、夢だった世界一周へ。

尊敬:緒方貞子さん
趣味:バスケットボール、ベリーダンス、サーフィン、バイク

著書

メディア出演履歴

【雑誌】
『Zai』(ダイヤモンド社)「ミニ株バトルコーナー」連載(06年7月号〜07年7月号)
『社労士V』連載(日本法令)(07年10月号〜)
『メモ ノート200%活用ブック』(日本能率協会)
『クロワッサン』(対談 高田万由子さん)
『週刊現代』『女性セブン』
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『月刊人事マネジメント』
『週刊ダイヤモンド 別冊特集』
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