【シリア】 ゴーマリーソーン♪ベドウィン♪

  • 2007年10月22日(月)
  • 21:41

ベイルートを出発した乗合ワゴン車は、私の他は全員男。視線が集中しているのを感じる。

中近東の男たちは日本人とは違い、じいっと相手の顔を見つめてくる。
でも残念、若くていい男は乗っていない。
7人乗りの日本の中古車におじさんばかり12人ほどとぎゅうぎゅうに詰め込まれ砂漠を移動していく。

1本の線のように伸びていたアスファルトに看板と小屋が見えてくると、どうやらそこがレバノンとシリとの国境とイミグレーション。サングラスをかけた運転手ムハンマドにビザ代を請求され、残っていた最後のレバノン・ポンドを取り出す。

ある疑念が頭をもたげる。終点の首都Damascusダマスカスにある広場に到着後、グラサンのムハンマドに尋ねる。

「ねえ、さっきのビザ代ごまかしてない?」

「はっはっは、ラーラー(まさか)!」

と否定するが、その顔はにやついている。イラっとして、広場ゆえに周りに人が多いのを素早く計算し、ムハンマドのかっこつけているサングラスを取り上げ、襟首をひねり上げる。

「な、何をするんだ。」

「嘘つかないで。」

人が集まってくる。公衆の面前のため、女に襟を掴まれても反撃はできない。

「多く取った分、返して!」

私、損するの大嫌いなのよ!
私の剣幕にびっくりした周りのおじさんたちが呼んだ警官がすっ飛んできた。警官もおろおろ。話を聞いておそるおそる、

「悪いが、こいつが多く取ったという証拠が今は出せないから、ここはアッラーに免じて見逃してやってくれないか。」

気がつくと、周りのおじさんたちも哀願するような目で私を見つめている…仕方ない、許してやるか。

私は手を離した。もう、シリア人男、頭にきちゃう!


***


ダマスカスは古代から様々な王朝によって占領につぐ占領が積み重ねられてきた都市だけあって、旧市街は年代と色が違う背の高い城壁が複雑に入り組み、雰囲気の異なる7か所の門が目印だが、中はまるで迷路。

市場にはオープンテラスでチャイと水タバコを出す店が多いが、その中にベドウィンの女性が身につける素敵なジュエリーを売る店を見つけ、入ってみる。

店員は背が高くどっしりした体つきをしていて、クッキングパパの岩ちゃんみたい。ジュエリーにうっとりして説明を聞き、私もこんな宝石を身につけたいわときゃっきゃっとしていたら、

「ベドウィンの婚礼衣装を着てみるかい?」

とクッキングパパからナイスな提案。黒地に豪華な赤い刺繍が施された長いスローブを着て、シルバーでできた冠を被る。

うふーん、花嫁気分。


「ベドウィンはシルバーアクセサリーや翡翠、琥珀、トルコから来るトルコ石、地中海から運ばれてくる貝細工なんかを好んだんだよ。貝細工は今でもいろんなものに重宝しているけれど、良かったら工房を見に来る?」

クッキング・パパについて市場の外れをしばらく行くと、工房では何人もの男たちが座って細かい作業をしている小屋があった。
磨いた貝の部品の他、天然の茶・赤・黄・青などの色をした木片がたくさん転がっている。どうやら、バックギャモンという中東起源のゲーム盤を、パーツごとに寄木細工で作っていた。

熱心に見ていると、このままクッキングパパは旧市街を案内してくれるという。

頭の上からツタが垂れ下がり、壁には出窓が並ぶ幅2メートルほどの石畳の小道を複雑に歩いていくと、巨大なウマイヤド・モスクが現れた。


その周囲のイスラム人街ではドアに「ファティマの手」と呼ばれる魔よけの取っ手がついていて、預言者ムハンマドの4女で聖なる力を使えたというファティマが家を守ってくれると言われている。


すぐ隣はもうユダヤ教徒の集落で、ドアにダビデの星のマークがついているからすぐわかる。
と思ったら、イエス・キリストを祭った地下教会アナニアス・チャペルが現れた。

「ダマスカスは、占領されてきた歴史を反映して、ユダヤ教・キリスト教(クリスチャン)・イスラム教(ムスリム)が複雑に入り混じった街なんだよ。」

とクッキングパパが説明してくれる。諍いが起こることはないの?と聞くと、ダマスカスでは比較的平和に仲良くやっているという。

「きみに出会った記念に、ジュエリーボックスをあげよう。」

と、寄木細工に貝をはめこんだ幾何学模様の小さな箱をプレゼントしてくれた。気前の良さと優しさ、花マルである。

***

クッキングパパに頼み、砂漠遊牧民ベドウィンたちの村へ案内人をつけてもらった。
ゴーマリソーン♪ベドウィン♪(ブラッド・ピット風) いい男いそう♪

北上して到着したのは砂漠以外何も見えない荒涼とした土地。動物の皮でできた家・ゲルでお母さんのファティマ、お姉さんのハナーンと一緒に赤ちゃんのムハンマドをあやしていると、羊たちを集めてチビッ子たちのハッサンとバルサンが帰ってきた。





それにしても働き盛りの若い男がいない。聞いてみると、
「町へ出稼ぎに行っているよ。主に観光業で働いているんだ。」
おっと、カラ振りやったわ。

***

その後、パルミラ遺跡へ。

「ラクダ乗らない?20ドル」

を断ったら、

「ホンダ乗らない?タダで」

最高。


パルミラ遺跡でバイクに乗せてくれたのは、ベドウィンのムハンマド(またムハンマド…イスラム教国では石を投げればムハンマドという名前に当たる。そうでなければマホメットかアリーだ。女性はファティマが多い)。

シリア砂漠を横断しシルクロードを行き来するキャラバンにとって、パルミラは重要な中継地点だった。バビロニア国時代のベル神殿や、ローマ帝国の植民地だった名残を示すどでかい列柱が並ぶ。
その合間をバイク二人乗りでかっ飛ばす。

ホンダバイクの兄ちゃんが、ひときわ大きな至聖所の跡に登れ!というのでよっこいしょと登って行ったら、

「やっほーい!君はバビロニアの女王だ!気分はどう!?」

と周りをバイクで走り回った。眼下に広がる王国の跡、想像力を膨らませる。
ベドウィンの兄ちゃん、ノリ最高やんけ。ちょっとカルいのが玉にキズだけども。
気分の上がった私は、バイクの後ろで昔流行ったリーバイスジーンズのCMソングをふんふん歌った。

***

レバノン、シリア、イスラエルと接しているのがゴラン高原。
アラブ諸国とイスラエルの対立を生で見たいと思い、行ってみることにした。

1967年の第3次中東戦争後イスラエルに占領下に置かれ、第4次中東戦争以来シリアとイスラエルの間で領有権が争われている。
1996年には日本の自衛隊も国連平和維持活動のUNDOF(国際兵力引き離し監視軍)として派遣されている。

シリア側で手続きをし、国連カーに乗り込んで襲撃を受けたかつての街に向かう。

…ぺっしゃんこ。

ビルも学校も銀行も何もかも崩れ落ち、戦車で踏みつけられ、ぺっしゃんこになっていた。
地雷がどこに仕掛けられているがわからないため車を降りることができない。
ここにはかつてシリア人が住み、農業を営んで街を形成していた…とは想像できないような廃墟に衝撃を受ける。

私は、イスラエルに入国することを決心した。


<グルメレポート>


私はついに口にする機会がなかったのだが、必ず「もう食べた?」と聞かれるあまりにも有名なお菓子をご紹介。「天空の城ラピュタ」のモデルになったクラックデシュバリュエという城の近く、ハマ地方に、Halawet El Jeben、通称「ハマロール」という超絶美味お菓子がある。クリームチーズをもっちりした生地で巻いてあり、ピスタチオと一緒に食べる。中東は、パイ生地を重ねたり麺状にして鳥の巣のように巻いたりしてパリパリに揚げ、これでもかというほどシロップをかけた激甘のお菓子が多いため、食感が違い甘さも控えめのハマロールは地方限定の珍しいお菓子だという。


こちらはゲルでハナーンが出してくれたベドウィン料理。キュウリ、炒めたポテトなどが一口サイズで並べられ、ナンで包んで食べる。熱いチャイが出るのは街中でも砂漠でも同じ。

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旅人

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1983年生まれ。東大法学部卒。
社会人としてスタートを切る前に、夢だった世界一周へ。

尊敬:緒方貞子さん
趣味:バスケットボール、ベリーダンス、サーフィン、バイク

著書

メディア出演履歴

【雑誌】
『Zai』(ダイヤモンド社)「ミニ株バトルコーナー」連載(06年7月号〜07年7月号)
『社労士V』連載(日本法令)(07年10月号〜)
『メモ ノート200%活用ブック』(日本能率協会)
『クロワッサン』(対談 高田万由子さん)
『週刊現代』『女性セブン』
『CIRCUS』『日経キャリアマガジン』
『月刊人事マネジメント』
『週刊ダイヤモンド 別冊特集』
【テレビ】
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